闇金融業者の形態変化と流れ


1980年代に普及し始めたATMにより、振り込み、振り替えが簡単にできるようになっていった。そして、それに伴い闇金融も形を変えていった。

かつては、来店がメインで利息も「トイチ(10日で1割)」「トニ(10日で2割)」あるいは「トサン(10日で3割)」が多かったとされる。また、来店であれば、融資される地域も限定的なものであった。

そして、ATMの普及により、来店中心から振り込み融資に対応するようになり始めた。しかし、振り込み融資での大きなリスクは「借用書」が取れないことである。

その、リスクを抑えるための策として「小口融資」によるリスク分散をし始めた。

この方法は闇金業者にとって繁栄をさせていく大きな糧となり始めた。まず、小口であればさらに高い利息でも完済できない金額ではない。なので利息収益は大きく増える。

例えば一人に100万貸したとしたらトイチ、トニが限界で、それ以上の利息を付けても支払うことは困難である。コケれば利益にならない。

しかし、小口で一人2万の融資であれば対象は50人になり利息が5割だったとしても完済が3万なので、不可能ではない。

そうすれば、100万に対し50万の利息が取れ、そのうち20%の客がコケても40万の収益になる。つまり、闇金業者にとってリスク分散しなおかつリターンが高い結果になる。

このような、振り込み融資は西(大阪側)から広まっていき、その後、東にも広まっていったと言われる。

そして、東京で急速にそのような業者が増えていき1990年代後半には飽和状態とも言えるほど闇金業者が増えていた。

そのころの闇金業者は店舗を構え貸金業の免許を取得し営業する登録業者がほとんどで、また、グループ化されていくことが多かった。

まさに、闇金融の最盛期ともいえる状態で、夜の繁華街は「金融屋」であふれているほどであった。余談であるが、当時、闇金融業者の多くはスーツ着用が多く、また、「メンズティノラス」のスーツが非常に好まれていた。

一見するとホストやキャッチと似たような格好でもあるが、違いはネクタイは必ず着用し、「ゼロハリバートン」のアタッシュケースや「ルイヴィトン」のカバンを持ち歩き、どこかイカツイ感じがあるところである。

普通なら、金融屋同士のトラブルもありそうな雰囲気だが、「暗黙の了解」で金融屋同士のもめごとはほぼなかった。

その理由は「組織化」されていたことにある。これらのような「小口で超高金利で振り込み融資」の闇金業者は、その多くが指定暴力団・山口組系の五菱会(ごりょうかい)のNo,2であった梶山進が傘化に治めていた。

通称「闇金の帝王」とも呼ばれて、このような仕組みの闇金グループを構築していった。

後にメディアを通しシステム金融とも呼ばれるようになったが、この呼び方は業者自身がそのように呼んでいたわけでも名乗っていたわけでもなく、あくまでもメディア発であると考えられる。(分かりやすいように以後、システム金融と記載する)

すべてではないが、都内の多くのシステム金融は五菱会系であったとされる(氷山の一角で他の組織下のグループも無数にあるはず)ことから、システム金融の考案者とされている。

しかし、呼ばれ方の違いなので「仕組みそのもの」を考案したかまでは、少し不明瞭である。

このように、傘化のグループやその横の繋がりから、金融屋同士のもめ事は御法度とされていたのである。

そして、このような暴利の闇金業者はどんどん数を増やしていき拡大していった。

このことにより、業者間でパイの取り合い、ラットレースのごとく競い合いが熾烈になり、それに加え利息も「トイチ~トゴ」に止まらず、「6割(60%)~10割(100%)」あるいは100%以上で、返済期間も10日間以下の超短期にもなっていった。

梶山進は「トイチは10日に一割と言う意味ではなく、10日に一回返済が来ること」と言ったとか言わなかったとか・・・・

話を戻すが、この闇金業者の増幅とそれに伴った業者間で取りっぱぐれないための競い合いが激化するにつれ、必然的に債務者は厳しい取り立てに会う。

そして、それにより債務整理、自己破産者も増えていき弁護士の仕事も増えていった。

弁護士にとって仕事が増えることは良いことであるが、激しい取り立てに追い込まれて自暴自棄になり、自殺、あるいは一家心中を図るなどの悲しい事件も当然ながら増えてしまう。

それらが引き金となり、世論、メディアが題材的に取り上げるようになり、ようやく警察も動き始めた。

そして、平成15年(2003年)8月、梶山は五菱会事件に絡み、出資法違反の疑いで逮捕された。だが、このことは闇金業者にとっては大した痛手ではなく、むしろ、喜ぶ業者もいたであろう。

と言うのも、大昔の金貸しの、いわゆる「ケツ持ち」的な存在は、その時代にとって何の意味もなく、むしろ、上納金をむさぼる存在でしかないからである。

その後の影響としては、貸金業法の改正やヤミ金融対策法などであるが、このことは直接的な大きなダメージはなく登録業者への規制が厳しくなった程度であった。

闇金業者はもともとリスクを背をってやっているので、その量刑がどの程度になろうが、「1も10も変わらない」と考える。

それにより、闇金業者は貸金業の「免許」をすて、看板を掲げず完全な「闇金業者」へ変貌していくことになる。社名もコロコロとかえたり、番号も一定期間すぎると変更したり、場所を変えたりなどである。

その時に闇金業者の多くは転送・逆転送(詳しくは転送と逆転送で信頼させるで)を使い、実店舗を装い融資を行うことが多くなった。

また。090金融など携帯での営業も増えていくことになり、これらのことにより居場所の特定が難しくなってしまう結果も招いてしまった。

つまり、それまでは、登録業者の闇金と言うことで分母がある程度把握できていたが、完全に潜ってしまった闇金の分母は特定することができなくなってしまったのである。

「携帯の電波から居場所を特定出来る」と思われるだろうが、これは、殺人、誘拐、など人命にかかわることの捜査には多く適用されるが、闇金レベルの事件にはなかなか用いられないものである。なので、闇金がらみには、口座、携帯の名義人、出金場所、防犯カメラなどから割り出していくことになる。

また、闇金業者にとって多少のダメージになったのは、2008年の判例で「闇金のはそもそも違法であるがゆえに、契約は無効、そして、借りても返さなくてよい」とするものである。

つまり、闇金からいくら借りても、一円たりとも返さなくてよいと言うことで、闇金にとって貸すだけ損するものなので、「闇金の抑止、撲滅」に繋がると考えたものであると思う。

その後、闇金の被害者数、被害金額、検挙数の推移から闇金業者の数も減っている傾向があると推測されている。日本弁護士連合会提出資料-金融庁を参照

また、2008年の判例以降3年くらいは「オレオレ詐欺」も減少していたとのデータがあるが(データ元URL:http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikenfurikome)このことから考えられることは、闇金融と詐欺は密接であったとと言うこと。

つまり、組織的に闇金と詐欺を併用し営業していた業者も多く存在していたということである。

実際に闇金のピーク時にも「保証金詐欺」も多く出てきていた。これは、簡単に言うと「あなたはブラックで借りられないから、大きく借りるためには最初に融資保証金を入れてください」と言うことである。

2008年以降闇金融の規模は小さくなりつつあるとされるが、その後、詐欺は急速に拡大しつつあると言うことは、闇金を辞めていったものも多いが、完全に詐欺に移行していったということは誰もが推測できることである。

そして、その手口は「だまし取ることに特化していき、対象を広げさまざまな手口になっていった」と言うことである。ここでも、同じリスクなら1も10も変わらないということであろう。

では、闇金融は減ったのか、撲滅できるのか、について話すれば、減ったことは間違いないが撲滅することは不可能に近いと言える。

大義名分とし「犯罪撲滅」「闇金撲滅」を掲げる警察や弁護士もいるが、勉強してきた賢い彼らは当然分かっていることであると思う。

そもそも、なぜ闇金が存在するのかを問えば、「需要があるから供給がある」これは根本的なことである。

いくら、闇金に対しての罰則を強化しようが、それを分かって借りる者が必ず存在する。供給者側の一方のみをいくら取り締まろうが、需要者がその存在を助けることになる。

これは、闇金に限ったことではなく、薬物でも同じことである。もしも、少しでも闇金を減らしたいと思うなら、利用者側にも罰則は必然的に必要になる。

例えば、分かって借りていて、かつ支払いをしているのであれば、それは、違法収益の幇助(ほうじょ)とも見なせる。つまり、加担者でもあるのではないだろうか。

もし、「被害者」と呼ばれる闇金利用者が「犯罪者の幇助で同罪」と見なされれば、利用者は少なからず躊躇するであろう。(ただし、借りる人間はいなくはならないので、闇金とその利用者はより密閉された関係性になってしまうが)

あるいは、詐欺に関しても言えることである。例えば投資金詐欺などは騙されてしまう者の「少しでも儲けたい」という欲望につけ込む。その根本的な欲望が存在する限りは詐欺師の需要を支えることになる。

また、うまい話は連鎖されることもある。元金保証でハイリターンであり、一度でもその一部を受け取ってしまえば、ほとんどは信用してしまう。

そこに、「知人や友人を紹介すると、配当に利率が数%上乗せできるキャンペーンがありますよ」なんて言われれば、その騙されている人は知人や友人に声をかけるかもしれない。そうなれば、「被害者」が「被害者」を増やす仕組みができてしまう。まるで、ねずみ講のように。

これは、「少しでも多くリターンが欲しい」という私利私欲がそうさせてしまう。

これらのように、お金が「必要」「欲しい」というニーズがある限り、それにつけ込む「供給」は後を止むことは無いものである。

少し、話はそれたが闇金融が完全に撲滅することは、限りなく不可能に近いと言うことである。


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