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「闇金融撲滅」と言うのは果てしない大義名分で課題とされている。
では、本当に闇金融が「0」なったとしたらどのようなことが起こってくるのだろうか?
「弁護士・司法書士」「警察」「利用者」の3つの視点から見ていきたい。
弁護士・司法書士
ここ10年の間で、法律事務所のCM、広告が非常に増えたことにお気づきだとは思う。
まずは、弁護士、司法書士の数を見ていただきたい。
10年の間を見ると弁護士は2倍以上の35045人になっている。この数が多いか、少ないかはわからないが「経営」していくためしのぎを削っていることは目に見てとれる。
そして、特に増えたのが「過払い返還請求を請け負う」などの宣伝である。まず「過払い」についてであるが、以下を見てもらいたい。
【出資法の上限金利】
出資法の上限金利は、
・1954年~「109.5 %」
・1983年11月1日~「73%」
・1986年11月1日~「54.75 %」
・1991年11月1日~「40.004 %」
・2000年6月1日~「29.2 %」
・2010年6月18日~「20.0%」
と改正されていった。
【利息制限法の上限金利】
・元本が100,000円未満の場合 年2割(20%)
・元本が100,000円以上1,000,000円未満の場合 年1割8分(18%)
・元本が1,000,000円以上の場合 年1割5分(15%)
となっている。
そして、利息制限法には、
「金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分につき無効である(本法1条1項」とされている。
つまり、過払い返還請求とは、出資法の上限で貸し出されているものを、あるいは貸し出されていたものを、利息制限法に組みなおして多く払っている分を元金に充て、
その結果、元金がなくなるのか、元金以上に支払っているかなどを計算し、多く払っていたら返還してもらうために業者へ請求するというもので、実際に「過払いビジネス」とも呼ばれることがある。
弁護士や司法書士が増え、法律事務所も増えてくれば当然ライバル事務所が増えることになる。その中で仕事をしていくには、これらの分野は少なからずビジネスチャンスとなる。
では、実際に「過払い返還請求」を行うとどうなるのかであるが、まず、弁護士が業者へ支払履歴を取り寄せ計算し、債務の見直しをする。
ここで、鋭い人なら気づいたかもしれないが「債務を見直す」と言うことは「債務整理」とほぼ変わらない状況であると言うことになる。
違いを言えば、債務整理はすべての債務を見直すが、過払い請求は本人の任意により特定の多く払ったと思われる業者に対し見直すと言うことになる。
しかし、当然、そうなればサラ金業者では「ブラック」の扱いになり得、今後借り入れができなくなるか、あるいは支障をきたす。
もし、銀行からもサラ金からも借り入れができなくなれば、行き着くのは闇金しかなくなってしまうことにもなる。
これは、闇金業者からすれば「おいしい」ことである、そして、借金を専門に事業を行っている法律事務所からすれば、これもまた需要が増えるので仕事が増える。
仕事が増えれば利益も増えるので、これを「最悪な状況」ととらえることは普通に考えて「ない」ことである。
では、もしも「闇金融撲滅」が叶ったとしたら、仕事にあぶれる法律事務所も出てきてしまうわけである。
そうなれば闇金融以外の、まだ、手つかずの分野を模索していくしかなくなってしまう。
最近、少し話題になり始めているのは賃貸物件の「更新費」で、この更新費は「払う必要がないのではないか、つまり、これは過払いにならないのか」とのことである。
今後、メディアがその火種を作り、借主が裁判に訴え最高裁で「無効かつ不当」となれば「賃貸物件更新費過払い請求」を宣伝する法律事務所も増えてくるのではないだろうか。
警察
警察は、公務員なので食いっぱぐれることはまずない。また、事件の数に対し人材もおそらくは足りていない状況である。
その中で、過度に闇金被害が増加することは、「検挙率」にも響いてしまう。また、詐欺被害などが増加するなかで、闇金被害の捜査は「面倒くさい仕事」でしかない。
警察の意気込みは、何と言っても「事件の大きさ」ではないだろうか。
例えば「被害金額10億円の詐欺」と「被害金額10万円の闇金」だったとしたら、どちらに気合が入るだろうか。考えるまでもない。
組織の大元の検挙であれば別だろうが、一闇金経営者など「小物の事件」でしかないのだ。
さらに言えば、公務員は給料がある程度保障されている(不祥事がない限り)。より給料が欲しければ昇格、昇進するしかない。そのためには「認められる事件の解決」が必要不可欠になる。
しかし、上に行ける限界が必ずあり、結局「キャリア」は「キャリア」にしかなれないと言われている。
それらの前提条件の中、意欲、野望、正義感、責任感は当然ながら薄れていくものでもある。(一部であると信じたいが)
そうなれば、あくせく働いて、大した評価にもならない事件はもはやお荷物でしかない。また、「どんな犯罪も許さない、正義の警察」と言った大義名分もあるので、警察にとって闇金撲滅は、どちらの意味でも「良い」方向なのではないだろうか。
利用者
闇金利用者にとって闇金撲滅はどうなのかは「闇金利用者」にしか判断できないものである。
と言ってしまうと話が終わってしまうので、いくつかのパターンを書くことにする。
まず、闇金利用者の多くは「闇金融」を上手く使っていることも多く、闇金を悪徳と考えず、金利は高いがあれば便利と考える者である。
これは、闇金業者との約束をしっかり守り返済すれば、何の問題も起こらず、むしろ、条件も良くなっていくような業者を利用している場合で、急に必要になった時にすぐに借りられるので利用者にとっては「高いが、困ったときに金を貸してくれる、必要な業者」になる。
押し貸しなどを受け無理やり利息を払わされた場合では、闇金がいなくなればせいせいするであろう。
闇金で、多重債務になり追い込みを食らい家族とも離散、会社もクビなどの場合は、復讐心から「撲滅してしまえ」と考えるかもしれない。
では、本当に「闇金が撲滅」し0になったとしたら、困ってしまう者も、よかったと思う者もいるが、どちらが多いかで言えば、多くの利用者はおそらく困るだろう。特に、サラ金、友人、銀行などから借りることができない者にとっては。
残念な事実かもしれないが、闇金融から金を借りられることで助かっている者も多い。
また、闇金で痛い目に合い、弁護士、司法書士、警察に相談に行きもう懲りていたとしても、その後、金が必要になりどこからも借りられなければ、また闇金を使う者が多い。中には弁護士介入中に新たな闇金で借り入れをする者もいる。
どこからも借り入れができない者にとって闇金は最後のライフラインでもあり、その闇金業者からも借り入れができないとなると・・・
例え、違法な闇金業者であったとしても「どこからも、ましてや闇金でさえも貸してくれない」となると「万が一」のときの不安も大きいだろう。
闇金融を推奨つもりはないが「これが、現実で現状」なのである。