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名簿屋(名簿業者)とは、その名の通りだが個人情報を取り扱う業者のことである。
その個人情報の内容はさまざまなもので、各カテゴリー分けされており、名簿の購入者側のニーズに応じて販売される。
ここで、「個人情報保護法」でアウトになるのではないか?といった疑問もでるが、
個人情報保護法の項目には、5,000件以上の個人情報を個人情報データベース等として所持し事業に用いている事業者は個人情報取扱事業者とされ、
23条第2項では、本人からの削除の申し出があった場合は必ず削除することを条件として、個人情報取扱事業者が本人の同意なく個人情報を第三者に提供することが認められている。
ただし、以下の項目以外で個人データを第三者に提供すると違法になる。
- 法令に基づく場合
- 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
- 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
- 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
これらを順守することにより、名簿業者はビジネスとして行うことが可能で、合法的に活動ができる。しかし、、闇金融や詐欺へ利用されると明らかに分かっていれば、健全な使われ方ではないので違法であり、共謀と見なされる。
例え、それを知らなかったと言い張っても、最終的に使われ方が違法であれば、何かしらの処罰は避けられない。
闇金融業者が購入する名簿とはどんなものなのか
誰でもわかることだろうが、
・多重債務者
・債務事故者(債務推理、自己破産)
・闇金利用者
などが多い。
ただし、これらは必ずしも名簿屋から購入するとは限らない。
例えば、闇金融利用者リストなどは、闇金融を利用している債務者なので、当然その情報は闇金業者が持っている。そして、その情報が闇金から闇金、闇金から名簿屋へ流れていく。
その後、さらに名簿屋から他の名簿屋、あるいは、闇金業者、それがまた、他の闇金業者からさらに他の闇金業者へ、このように拡散されていく。
闇金業者にとって最も融資しやすく信頼ある名簿は「闇金利用者」のリストになり、現在進行形で利用、支払い、あるいは完済をしている債務者リストは大好物なのである。
なので、闇金業者にとって同業他社の現客名簿(闇金業界では、顧客のことを現客と呼ばれる)は、かなり熱い名簿とされている。しかし、このような名簿は簡単には手に入れにくく、現客はその店にとって「命」ともいえる名簿でもある。
それが、外に流出することは本来はないが、流出してしまうとすれば「誰かが金ほしさに売った」と考えられる。
それ以外の理由で出回ってしまうのは、闇金業者同士での現客名簿の交換、つまり、組織内、グループ内での名簿のやり取りになるが、
そのような形で扱われる現客名簿は「しょっぱい客(質が低い、利息があまり取れない客)」であることが多く、おいしい客(質が良い、利息がより取れる客)はほとんど交換されないものである。
名簿屋の情報源とは
名簿屋の情報源はありとあらゆるところから収集される。なので、ここでは、闇金融、詐欺類に使われる名簿情報に絞って説明することにする。
- 官報に開示されている破産者情報
- サラ金等の多重債務者ブラックリスト
- 何らかの申し込み
- 闇金業者・詐欺集団からのフィードバック
- 電話帳など
法律、政令、条約等の公布をはじめとして、国や特殊法人等の諸報告や資料を公表する「国の広報紙」で、自己破産者の開示は、債権者への報告のためとして開示されている。ちなみに「官報情報検索サービス」で調べることができる。
「何らかの形」で個人情報が売買されている、・か・も・しれない。*詳しい言及は避けることにする。
ウェブ、雑誌、新聞等で何らかの申し込みをし、個人情報が名簿屋に流れるなど。例えば、借り入れの申し込み、投資、ギャンブルなどの「○○必勝法や○○方略法」のような、おいしい話への申し込み。これらは、後に闇金融の勧誘やDM、詐欺のカモとして標的になることがある。
これは、先ほども説明したように、一度闇金から借り入れをしたり、あるいは詐欺に引っかかったりなどにより、情報が名簿屋などに回ってしまうケースである。
これは、闇金業者にはほとんどないことだが、「オレオレ詐欺」など、不特定多数へアプローチするなどに流用されることがある。
基本的には、これら以外から名簿屋に情報が載ることはほとんどないと考えられる。闇金融からDM(ダイレクトメール)、特に電話により直接融資の案内が来る場合は上記のいずれか以外では、ほぼ考えられない。
なぜなら「まったく可能性のない様な者」へアプローチすることは、時間、お金、労力、の無駄遣いになりかねないからである。
なので、借金や甘い言葉への申し込み、電話帳への登録もしたことがない者は、名簿屋の情報には載ることがほぼなく、闇金業者からのDM、融資の勧誘はまずないので心配はいらないだろう。
名簿の単価と形式
名簿屋が収集する個人情報は、一件あたり0~数円程度で入手される。高くても10円以下がほとんどであろう。
そして、その情報をクリーニング(住所が存在するか、電話番号が使用されているものかなど調査、選別すること)やクレンジング(顧客データが重複していないかなど最新の状態にすること)を行い、数円~数十円程度で業者に販売する。
販売される名簿は、DM用、電話勧誘用など用途によって情報形態が違い、DM用であれば下図のようにタックシールと呼ばれるシールになった状態で販売されることもある。
どこまでの状態で買うかなどでも値段が変わってくる。例えば、記憶媒体でデータだけなのか、タックシール前の状態なのか、あるいは、シールになっている状態かなどである。
また、図にあるように、名前の下にアルファベットや数字の羅列が入っていることが多く、これは、どこの名簿なのか分かるようになっている。
闇金業者は、DMにより融資の申し込みが入った時、必ずその番号を聞き、本人宛で本人が申し込んでいるかを照合する。これは、詐欺師対策の一つである。(詳しくは、闇金業者対詐欺師で)
また、持ち戻った(住所違い、宛先不明などでDMが配達されず戻ってくること)DMは、名簿屋が最終的に回収しクリーニングやクレンジングを行い最新の状態に保たれるわけである。
以上のように、名簿屋と闇金融は切っても切れない繋がりがあり、あるいは、どちらもやっていると言ったケースも、おそらくはあるであろう。
ただし、ウェブ検索などで簡単に調べられて、かつ会社情報などがしっかり記載し大々的に広告している名簿屋は、法を順守しまともな営業を行っていると考えられる。
と言うのも、闇金業者の多くはネットワーク(横のつながり、知り合いなど)を駆使し紹介してもらうなど、いきなりよく分からない名簿屋を使うことは少なく、警戒心も強い。
ゆえに、名簿屋もリスクを考えれば、その逆のパターンで取引先を増やしていくことの方が安全であると考える。なぜなら、一度でも警察の捜査、調査などを受けてしまえば、二度と取引されなくなるからである。
中には、ウェブ検索で出てくるそれっぽい名簿屋も存在はするが、使い捨てでウェブサイトを作成したり、電話番号、社名を変えたりし巧妙に行なわれているものである。
名簿屋の数
このような名簿屋はいったいどれほどの数がいるのか?
この問いに関して、はっきり言ってしまえば未知数であり、これは、闇金業者にも言える。
水面下でうごめく業者の数を計ることは限りなく難しく、個人レベルの規模もあれば、組織レベルの規模もあり、また、境界線がはっきりしているとも言えない。
なので、「一概に、これだけいるとは言い切れない数」と言う表現が一番正しい表し方ではないかと思える。